フッ素(F)は私たちの身近な自然界にある元素のひとつで、お茶や魚介類など多くの食品に含まれています。フッ素はむし歯予防に欠かせないだけでなく、丈夫な歯や骨をつくるために大切な役割を果たしています。
☆フッ素応用と虫歯予防処置法
①フッ素の全身応用の種類と虫歯抑制率
・水道水フロリデーション(永久歯:40〜60%、乳歯:30%前後)
・フッ化物錠剤(20〜40%)
・フッ化物添加食塩(44〜84%)
これらの方法は、口から摂取されたフッ素が消化管から吸収され、歯が形成される際にフッ素が取り込まれることにより、歯のフッ化物量が増加し、歯の溝の形態が浅くなる(虫歯になりにくくなる)という報告があります。
②フッ素の局所応用の種類と虫歯抑制率
・フッ化物歯面塗布(永久歯:20〜50%)
・フッ化物洗口(永久歯:20〜50%)
・フッ化物配合歯磨剤(永久歯:30〜40%)
これらの方法は、フッ素を歯に直接作用させる方法です。フッ素は歯に取り込まれるだけでなく、歯に吸着し、歯垢や唾液中に広がり、その濃度を高めて歯の周りからも作用します。
このうちフッ化物歯面塗布法は、歯科医師、歯科衛生士が行うことのできる専門的な虫歯予防処置です。
このフッ化物歯面塗布法は歯が生えた直後が反応性が高く、フッ素塗布によるフッ素の取り込みの量が多いです。
また、歯は生えてから成熟するまでの時間が2-3年かかります。その期間は虫歯になるリスクが高い状態です。
そのため、個々の歯が生えてくるたびにフッ素を塗ることが望ましいです。 また、成人や高齢者の場合は、歯と歯の間の虫歯や、歯の根元の虫歯予防に効果的です。
☆フッ素塗布後の注意☆
・塗った後30分間はうがいや、飲食は避けるようにします。
・口に溜まった唾液は、そのまま吐き出すようにします。
・フッ素はあくまでも予防です。フッ素を塗ったら虫歯にならないということでは、ありません。
・定期的に塗ることで、より高いフッ素の効果が得られます。
・歯磨き粉に配合されているフッ素の濃度
日本では、2017年3月に、国際基準(ISO)に則って、歯磨き粉に配合できるフッ素(フッ化物)濃度の上限が1000ppmから1500ppmになりました。それ以来、各メーカーが続々と新しい上限に対応したフッ素濃度1450ppmの歯みがき粉を発売しており、これを「高濃度フッ素配合」と表現しています。
フッ素はむし歯予防に欠かせない成分で、毎日使う歯みがき剤にどれだけ含まれているかは、予防効果に直結します。
<ppmとは?>
- ●歯みがき粉のフッ素の濃度を示す「ppm」は、parts per million の略で、1ppmは「100万分の1」を意味します。歯みがき剤が100万の均一な粒子から成っているとしたら、その中の1つがフッ素ということです。
- ●パーセント表記にすると、1000ppmは0.1%。1500ppmは0.15%になります。配合濃度が少ないものはパーセントよりもppmで表現したほうがわかりやすいため、歯みがき剤ではppmという単位が用いられています。
<「1450」の理由>
1500ppmが上限なのに、なぜ1450ppmなの?と思いますよね。
歯みがき粉を製造する際、1501ppmのように1ppmでも規定より多くフッ素を配合してしまったら、承認濃度をオーバーするため販売できません。そのため、それを避けるため少し低めの1450ppmに設定しています(上限が1000ppmの時は950ppmで製造していたのも、同じ理由です)。
虫歯の抑制と密接に関係しているフッ素について記述しました。
口は人間が栄養を摂取するための大事な器官の一つです。口腔内の健康のために色々と知識をつけることは大事だと考えています。
定期的に歯科受診をこころがけましょう!
萩野 貴磨